旧統一教会に関する陳情について

選挙期間中、候補者が市内で政策をお伝えしていると、市民の皆さんから「統一教会が多摩市に来ることについてどう考えているのか」とよく聞かれます。霊感商法などの犯罪性と被害の実態から、大学や高校といった教育施設の近隣での活動の展開は拒むべきとの立場です。市民の皆さんによる反対のアクションも拡がってきており、議会全体として受け止め対応する必要があるというのが多摩・生活者ネットワークの考えです。ここでは、12月議会に市民から提出された陳情に対する、本会議での会派の意見討論をお知らせします。

 

旧統一教会に関する陳情

市議会として関係を持たないと決議し市民を安心させてほしい。市に対しても、後援依頼などきっぱり断る措置を望むと決議してほしい。

 

以下、多摩市議会議事録からの転記です。

公明党

今夏の卑劣で悲惨な事件の後、世界平和統一家庭連合、いわゆる旧統一教会の問題をめぐり悪質な霊感商法や法外な献金強要など被害の実態が改めて浮き彫りになりました。
国としても、12月10日、新法である被害防止救済法、正式名称「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」を成立させ、被害者救済に向け法整備を行ったところです。
このように、旧統一教会は1宗教法人というより反社会的団体ということは明白であり、このような団体と関係を持たないということは至極当然でありますので、陳情者の趣旨は理解できます。
しかし、多摩市議会として決議となると、あらゆる反社会的団体と関係を持たない等の決議を得ることになるので、現実的に難しいと判断し、趣旨採択の意見討論とします。

 

共産党
統一教会については、洗脳によって恐怖を植えつけ多額の寄附を求める霊感商法、合同結婚式や信者の子どもたちの置かれた悲惨な状況、二世問題などが現に社会問題化しており、宗教の名をかりた反社会的集団であることは明らかです。市議会、市当局の両者ともに関係を持つべきではない団体です。
共同通信の調査では、統一教会や関連団体との接点があった都道府県議が少なくとも334人、うち自民党が8割を超えています。調査に回答していない議員も157人おり、実際に関係のあった議員はさらに多いでしょう。この調査によって統一教会と政治の癒着が国政にとどまらず全国津々浦々地方議会にまで広がっている事実が明らかになり、政治不信を招いています。
日本共産党はもちろん、多くの政党が統一教会との関係を持つべきではないという立場を表明しており、前段で述べたように深い関係が取り沙汰されている自民党についても、8月31日の会見で岸田首相が「自民党総裁として関係を断つことを党の基本方針として徹底する」としています。
しかし一方で、首相会見以降も茨城県議会、高知県議会、京都府議会、千葉県議会などで統一教会と自民党の癒着究明・被害者救済を求める意見書が相次いで否決されており、統一教会の事実上の機関誌『世界日報』では自民党議員が反対姿勢を明確にしたからだと報道されています。自民党として関係を断ち切るとしながら、地方議会においては関係解消の前提となる癒着の解明や被害者救済を求める声を潰していく不誠実な姿勢は、さらなる疑念、政治不信を招くものです。
現在多くの地方議会において統一教会と関係しないことを表明する決議が上げられています。そうした動きに対して、特定宗教との関係を遮断する内容の決議をしないことや議員らの信仰を質問しないように求める陳情書や要望書が、11月から12月の間に少なくとも19府県の28議会に提出されていたことが共同通信のまとめでわかり、報道されています。こうした陳情書や要望書、いずれも文面が酷似しており、統一教会の組織的な関与も疑われています。いずれのものも背景に、マスコミ等で政治家に特定の宗教団体との関係を断つように求める論調が繰り返されていると主張し、特定の宗教法人及びその関連団体との関係を遮断する内容の宣言・決議をしないことと、公人及び私人に対し特定の宗教に対する信仰の有無を問うたり、その団体との関係を調査・質問したりしないことの2項目を求めており、富山県議会などに提出されたものには「反社会的団体との関わりを持たないなどと宣言する場合には反社会的団体の正確な定義を示すこと」との項目も加えられています。
意図的に対象を宗教団体全体に拡大しつつ、反社会的団体の定義という本質とは違う部分にフォーカスすることで統一教会の反社会性や政治との癒着といった問題を宗教全体や反社会的集団に対するものへと一般化しごまかそうとするものです。
こうした論にくみするべきではありません。政治不信を払拭するためにも、こうしたごまかしに乗らず、多摩市議会として関係を持たないという姿勢を明確に示し、陳情が求める決議を上げることが必要だ、このことを申し上げ、4陳情第16号旧統一教会に関する陳情について、日本共産党多摩市議団を代表して採択すべきとの立場での討論とします。

 

フェアな市政
当会派としては、もし同陳情がなかった場合、会派として議員提出議案として同種の内容のものを提案することも必要ではないかと考えていたところでした。
そうした中、市民の中からこうした陳情が出されましたが、単に1宗教法人の行いの好き嫌いではなく人権問題、政治の責任が改めて市議会にも問われていることを重く受け止める必要があろうかと思います。
国では、いわゆる被害者救済新法がつくられましたが、マインドコントロール的な行為の規定とその禁止、寄附の取り消し要件、債権者代位権、配慮義務規定などが不十分と思われますし、相談窓口や支援体制、解散命令請求、養子縁組、資産の海外流出、政治と宗教の関わりなどについては課題のままと言えます。
宗教2世の被害者小川さゆりさんは、被害者救済法の課題として子どもの被害が現実的には全く救済できないため、次期国会で宗教的児童虐待を防止する法案を与野党協力して成立させるよう求めていらっしゃいます。そうした背景にも多摩市議会として心を寄せ、同陳情にある決議を上げるべきと申し上げ、採択すべき立場からの討論といたします。

 

生活者ネット・社民の会
旧統一教会問題の本質は信教の自由に関わるものでは全くなく、反社会的行為と政教分離の原則に抵触する点にあります。実際に数々の訴訟と裁判を通して明らかになったのは、協会が行った霊感商法の犯罪性と巻き込まれた家族の悲惨な状況でした。彼らの現実の行為が反社会的なものとして裁かれているのであり、被告側が信教の自由を持ち出して抗弁するのは苦し紛れの詭弁にすぎません。
旧統一教会が商業団体など様々な組織をつくって活動していることも周知の事実であり、アメリカなどでは宗教団体としての認知度のほうが低いとも言われています。国際的にはカルト団体への取り組みと取り締まりが進んでいる中、ほぼ無策状態に置かれてきたのが日本の偽らざる現状です。例えばフランスでは反セクト法を定め、子どもの強制的な入信や公権力への浸透の企てなど10の定義によってセクト的団体への取り締まりを強化しています。
協会の反社会的行為が周知されてから数えても30年以上、この問題はしっかりした議論と対応ができないまま、社会的にはほとんど放置されてきました。その果てに起きたのが安倍元首相の銃撃事件であり、元首相のみならず多数の政治家が政治家の肩書を持って協会の様々な活動と関わってきたことも、この間の調査である程度判明しました。
入信者の家族や2世信者の抱える苦しみを目の当たりにした今、私たちは防げたかもしれない被害を政治の怠慢と国民の無関心によって引き起こさせてしまったという事実を重く受け止め、今度こそ根本的な解決を図らなければなりません。
このような大きな社会問題となっている組織、反社会的行為が認定されている組織、そしてあまりにも政治への密着が過剰である組織に対して、市民が議会と行政に毅然とした態度を求めるのは当然のことと考えます。
ネット・社民の会としては委員長報告に反対し、採択すべきという立場での意見討論といたします。

 

自民党
現在社会的に大きな問題となっている旧統一教会について、自民党としては、今後旧統一教会及びその関係団体と関係遮断を徹底していく方針を表明しています。国民・市民の皆様から疑念を抱かれることのないよう、活動を助長する行為やこれらの組織・団体からの不当な政治的な影響を受け得る行為について厳に控える方針を党所属国会議員及び都道府県支部連合会、地方組織、地方議員へ周知をし、適切に対処をしているところです。
反社会的集団と関わらないことは当然のことであり、今回の陳情では反社会的集団として旧統一教会1団体のみを対象としていますが、全ての集団と関わらないことが当然のことだと思います。
ただ、このような件に関しては議会として決議するというよりも各議員がそれぞれの判断でするものではないかとも思います。また、市行政当局にも後援依頼などをきっぱりと断る措置を望む決議の部分についても、議会が行政に対する決議としては適当でないと思われるため、今回の陳情については趣旨採択とさせていただきます。