農薬学習会報告

 

10月19日(土)に、茨城県石岡市にて、日本有機農業研究会主催の市民公開研究会が開催されました。

国際有機農業映画祭2013(11/23・24)

テーマは、第1部「今、農薬問題とは」、第2部「有機農業運動と脱原発活動の新たな構築に向けて」。本日は、農薬問題について簡単に報告します。

1990年頃に開発された「ネオニコチノイド系農薬」は、その使用量がこの10年間で約3倍に増え、その影響が懸念されています。この農薬の特徴は、①浸透性(植物内部に浸透する、従って洗っても落ちない)、②残効性、③神経毒性で、世界中で問題視されているミツバチ大量死の原因とも目され、生態系、さらに人への影響が危惧されています。2000年頃からは、子どもの脳の発達に対する影響データも発表され始め、フランスは2006年にネオニコチノイド系農薬の使用を禁止しています( ドイツは2008年にネオニコチノイド系農薬販売禁止、イタリア は2008年種子処理禁止)。

 日本では、農業・林業での多用に加え、家庭用(住宅建材、シロアリ駆除、ペットのノミ駆除、家庭内殺虫剤等)としても利用され、その使用は生活全般に広がっています。浸透性や残効性の高さから、使用量自体が抑えられるとして「減農薬栽培」を謳う業者もありますが、イモチ病対策として多投される東南アジアではすでに抵抗性害虫の大発生も見られ、お定まりの悪循環に陥っています。そして必ずや引き起こされる生物濃縮。有害性が明らかになり禁止されては新手の農薬が登場するというイタチごっこの繰り返しです。

工業化に伴う苛性ソーダの製造が引き金になった塩素の兵器“活用”やその延長線上に“開発”された様々な農薬、塩ビ、PCB、さらにダイオキシン問題等々の流れがよくわかる学習会でしたが、上記悪循環を断ち切るためにも抜本的な変革、つまりそれらを「使わない」という生活への転換が必要であることを再度確認しました。目先の利益や“経済発展”を優先してひた走ってきた農業及び工業の近代化さらに原子力化の複合汚染により、私たちは、食べ物やその生産現場を汚染し尽くしてしまった感があります。有機農業による(※)地道な田畑の再生と、河川、湖沼、海への汚染防止が急務です。

※腐食に農薬や放射能が吸着されるとの研究データが出ています。有機農業が行われている土壌には腐食が多く蓄積されており、吸着効果の高さが期待できます。また、この作用が、放射能の作物への移行を防いでいるのではないかと考えられます。有機農業の実践により土壌の団粒化を進め、土壌浸食を防ぐことが、こうした汚染の拡大を食い止めることにつながります。

最後に、根を同じくする水俣病や原発等々の問題も含め、ドイツの倫理委員会の存在に話が及びました。「次の世代に大きな負の遺産を残すことは倫理的に認められない」として、目の前の経済的利益よりも、子ども達が、平和な環境の中で健康に生きる権利を保障しようとする姿勢と、その姿勢に基づいて判断する行動力が印象に残りました。

環境部会 吉川直子

国際有機農業映画祭2013の詳細はこちらをhttp://www.yuki-eiga.com/