スマホと子ども──“ポップコーン脳”の時代に向き合う
愛知県豊明市が、スマートフォン使用を1日2時間以内に制限する条例案を提出しました。対象は全年代の市民だそうで、SNSでは「時代錯誤だ」「スマホは学びの道具にもなるのに」といった批判が相次いでいます。しかし大人はともかく、特に子どもとスマホの関係については、社会が真剣に向き合っていくべきではないでしょうか。
今やスマートフォンは、学習や創作にも使える強力なツールです。スマホがあれば、英語の勉強やイラスト制作、動画編集まで幅広くこなせます。クリエイティブな活動のツールとしても、大人にとっても子どもにとっても便利な存在です。
でも、子どもたちは本当に「うまく使いこなせている」のでしょうか?
最近では、ショート動画を長く見続けてしまう子が増えています。短くて刺激的な動画が次々に自動再生され、脳に快楽物質を与える仕組みになっているからです。あるお母さんは、連絡用として子どもに渡したスマホで、LINEのショート動画を1日8時間も見ていたことに驚いたと話してくれました。子どもたちが集まっているのに誰も目を合わせず、うなだれてスマホに夢中。呼びかけても反応がない姿に、「まるで薬物中毒のようだった」と感じたという声も聞きます。
こうしたことの影響として、最近注目されているのが「ポップコーン脳」です。これは、インターネットやSNSの長時間利用によって、集中力や思考力が低下し、次々と注意が移り変わる状態を指す言葉です。本来重要なことよりも、SNSの通知や短い快楽を優先するようになり、長文読解や作文が苦手になり、熟考できなくなってしまう。ポップコーンが弾けるように、思考があちこちに飛んでいく様子から名付けられました。特に発達段階にある子どもたちにとっては、取り返しのつかない悪影響になるという指摘もあります。
技術の進化を止めることはできません。でも、だからこそ社会全体で「どう付き合うか」を真剣に考える必要があります。スマホの問題は、家庭だけの問題ではありません。子どもは社会で育てる存在です。アルコールやタバコと同じように、スマホも“依存性”という観点で捉えるべき時期に来ているのかもしれません。
今回は、条例化の是非の方が大きな話題になっていますが、スマホの中毒性と、それが子どもたちの育ちに及ぼす影響について、もっと社会全体で向き合っていく動きが広がることを願っています。
多摩ネット会員 西嶋